些細事備忘録コラム①~生理痛について~
大学卒業後、母校の産婦人科医局に入局し、30有余年が過ぎました。
産婦人科医院を共同で開業し20年がたち、日常の診療で気づかされたことなど、
偶にその時々を振り返りつつ、医療の今を綴っていきます。
女性の個々のライフステージにおいて何かしらのアドバイスになれば、と思います。
生理痛について
月経に随伴して起こる病的症状で、月経時あるいは月経直前より始まる強い下腹部痛や腰痛を主症状とします。
下腹痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、イライラ、下痢および憂うつの順に多くみられます。
月経困難症とも呼びます。
子宮内膜症などに起因する器質性月経困難症と特定の疾患のない機能性月経困難症にわけられます。
思春期では、機能性月経困難症が多いようです。
機能性月経困難症の痛みは、月経の初日および2日目頃の出血が多い時に強く、痙攣性、周期性で、原因は子宮頸管狭小や生理活性物質であるプロスタグランジンなどによる子宮の過収縮です。
この痛みは排卵がない周期では出現することは稀で、排卵周期が確立されるのに伴って出現します。
痛みの原因となるプロスタグランジンは月経血を排出するために子宮内膜で産生され、プロスタグランジンにより子宮筋の過剰収縮とそれに伴う虚血性疼痛が発生します。
月経時にみられる悪心、下腹痛、下痢、頭痛などの全身症状は、プロスタグランジンとその代謝物質が体循環に流入することによって生じると考えられています。
器質性月経困難症の原因疾患としては、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などがあります。
表1器質性月経困難症の原疾患
| 子宮内膜症 先天性器奇形 子宮頸管狭窄 卵巣嚢腫 子宮筋腫 子宮腺筋症 骨盤内炎症性疾患 骨盤内癒着 など |
機能性月経困難症は、年齢とともに、妊娠出産とともに軽快すると説明されていることが多いですが、
女性のライフスタイルが変化し、妊娠出産の年齢が高くなっている現代において、思春期女子に対して、
機能性月経困難症が加齢にしたがい軽快する可能性を話してやり過ごすよりも、症状への対処や治療の選択肢、子宮内膜症のリスクなどをきちんと提示して対応することが望ましいと考えます。
月経に伴う症状は、我慢すべきであり、相談しても仕方がない、受診をするようなものではないという意識がいまだに強いという印象をうけます。
実際相談を受けた保護者もどう対応したらよいか、適切な指針も無く、中々婦人科受診に繋がりません。
しかし、思春期では、月経困難症による学校の欠席や、学業やスポーツに集中できない、成績が落ちるといった問題、精神的・身体的症状による社会生活への影響など様々な問題が存在します。
現代女性は生涯に経験する月経回数が非常に多くなっています。
昔の女性は生涯に経験する月経回数が50回程度であったのに対し、現代の女性は約450回とも言われます。
これは主に生涯の出産回数と関係しています。
出産すると1-2年程度、月経を休む期間ができるのですが、
10代初めで月経を迎え、平均約50歳で閉経する約40年間の中で今の女性は1、2度出産をしたとしても、
月経を経験する期間がかつての10倍近く多くなるのです。
その分、月経随伴症状に悩む回数も、期間も増えるわけです。
女性特有の健康課題による社会全体の経済損失の試算では、
月経随伴症 6千億円、更年期症 1兆9千億円、婦人科悪性腫瘍 6千億円、不妊治療 3千億円、総額 3兆4千億円となります。
女性の生涯にわたる健康保持・増進の視点からもぜひ生理痛に対し、積極的に治療していただきたいと思っています。
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